高齢者の割合が増加していく中、お風呂のバリアフリーリフォームをする家庭が増えています。皆さんはお風呂で怪我をしそうになったことはありますか?
実際に、「将来のことも考えて、そろそろバリアフリーの仕様に変えたい…」と思う方も多くいらっしゃいます。
実は、お風呂には危険がたくさん。そのためお風呂で怪我や事故を起こしてしまう高齢者は非常に多く、こうした不慮の事故をリフォームなどによって未然に防ぐ必要があるのです。
ここからはお風呂に潜む危険や、バリアフリーリフォームの種類についてご紹介します。この記事を読めば、ご家庭にとってどのリフォームが一番適しているかが理解できることでしょう。
バリアフリーの必要性
まず、なぜバリアフリーリフォームが必要なのか簡単にご説明します。
1-1. 浴室内の事故の現状
厚生労働省の調べによると、なんと「家庭内の不慮の事故死」の約3割がお風呂での溺死や溺水だということが分かっています(2010年 厚生労働省調べ)。
さらに、お風呂での転倒事故やヒートショックによる死亡例などもあわせればさらに高い割合となるでしょう。
それだけお風呂は危険の潜んでいる場所だということです。
特に体が思うように動かないお年寄りにとって、お風呂の環境には細心の注意を払う必要があります。
1-2. 事故や怪我の予防
そんなお風呂での痛ましい事故や怪我を防ぐために、必要なのがバリアフリーリフォームです。
「バリアフリー」とは生活の上で発生する障壁を取り除くこと。
つまり高齢者や体が不自由な方にとって、不便に思われる場所を改善するリフォームを意味します。
ちなみに新築の段階で誰もが使いやすいデザインを設計することは「ユニバーサルデザイン」と呼びます。
バリアフリーは後からのリフォームなので、その人にとって最適な工事を行うことが出来ます。
1-3. 介護者が使いやすいお風呂へ
ちなみにバリアフリーリフォームによって、恩恵を受けるのは高齢者や障害のある方自身だけではありません。
介護者となる方もまた、バリアフリーリフォームによってお風呂を使いやすくなります。
例えば介護者が体を洗ってあげなくてはいけない場合。お風呂が狭くては介護者の立ち回りも非常に不便です。
しかしこれをバリアフリーリフォームして間取りを広げることにより、介護者の動線もスムーズになるといったメリットがあります。
介護する側もされる側も便利になるのがバリアフリーリフォームなのです。
お風呂で危険なポイント
それでは続いて、お風呂の中で危険なポイントを挙げていきます。
2-1. 入口
お風呂の危険は入り口から始まっています。
お風呂の入り口に段差がある家は少なくないでしょう。若い人にとって、なんでもない段差であっても高齢者や車いすの人にとってはかなりの障壁になります。
入るなり一段下がっているタイプの浴槽は非常に危険です。その段差1つでバランスを崩し、転倒の原因にもなりかねません。
お風呂で転倒すると、裸である上に床が固いので大けがに繋がるリスクも高まってしまいます。
2-2. 床
続いて床です。特にタイル張りの昔ながらの床は要注意。
こうした床は水はけが悪く、濡れると特にツルツルしているので滑りやすい傾向があります。このような床だと、浴槽に入ってからの転倒のリスクも非常に高くなるのです。
洗い場の中でちょっとした移動をするにも、高齢者の場合は転倒リスクが伴います。
さらに体を洗う際には立ち上がったりしゃがんだりする動作が必要です。この時、特にバランスを崩しやすくなります。
そのため手すりも何もないお風呂ではより一層転倒リスクが高いといえます。
2-3. 浴槽
溺死が起きてしまう場所でもある浴槽。この浴槽の危険性は、実は浴槽自体の深さではないのです。
最も重要なのは、手すりをまたぐときの高さ。高齢者は特に、手すりをまたぐのに足を上げるのが困難です。
浴槽に入ろうとして足をあげたところ、上がりきらずに引っかかり浴槽に転落してしまうことも少なくありません。
またぎ部分が高い浴槽は、高齢者にとって非常に身体の負担になります。
さらに浴槽の底面になにも凹凸が無いと、すべってしまいがちです。浴槽にもたれて寝てしまい、身体がすべって溺死してしまうこともあります。
底面がツルツルしている浴槽もまた危険なのです。
2-4. 温度
最後はお風呂の温度です。高齢者は特に「ヒートショック」という現象を起こしやすいとされています。
これは脱衣所とお風呂の温度差で急激に血圧が変化し、失神、脳梗塞、心筋梗塞や不整脈を起こすというものです。
つまりお風呂に入ったときの「寒い」という感覚もまた危険だということです。
特に冬場はこのヒートショックが起こりやすくなります。
ひんやりとしたお風呂の空気に、冷たい床。これが揃うとヒートショックが起こりやすくなってしまいます。
バリアフリーリフォームの種類
続いて、バリアフリーリフォームの種類について見ていきましょう。
3-1. 入口の段差をなくす
まず入り口での転倒リスクを軽減するリフォームです。
転倒のリスクを無くすには、一般的に段差を2cm以下に抑えると良いとされています。完全にフラットな状態にしなくても、段差を2cm以下まで埋めることでかなり使用感が変わります。
ただこのときに注意が必要なのは、脱衣所に水があふれていかないようにするという点です。排水機能を新たに付けるなどといった対策が必要な場合もあります。
ちなみにこの工事には約5~7万円の工事費用がかかります。
3-2. 扉を変える
押して開けるタイプのドアは、実はいざという時に危険です。中で人が倒れてしまったときに、人の重さで開かない可能性があるのです。
そのため扉は引き戸か折れ戸がおすすめ。
最も洗い場のスペースを広くとれるのは引き戸ですが、扉をしまい込むスペースが必要になります。
また、扉にガラスの素材を使用している場合も交換をおすすめします。ガラスは万が一転倒した時や手をついた時に割れる危険性があります。そして大けがにつながりかねません。
そのためお風呂の扉は割れにくい素材のものを使用しましょう。この工事には約6万~20万円がかかるとされています。
3-3. 床をすべりにくく冷たくないものに変更
床のバリアフリーリフォームは、素材を変えることから始まります。
ポイントは、「滑りにくい」という点と「冷たくない」という点。出来ればクッション性も高いものだとなお良いでしょう。
今では各リフォームメーカーなどから、これらの条件を揃えた床の素材が開発されています。
従来のタイル張りの床ではなく、滑りにくさや水はけ・保温性に着目した新素材の床です。
こうした床に変えることで転倒予防にもつながり、ヒートショックも起こりにくくなります。
ちなみにこの工事には約10万円~20万円の費用がかかるとされています。
3-4. 浴槽はまたぎやすいものに
続いて浴槽のリフォームです。またぐときの段差を低くするには浴槽を床に埋め込んだ「半埋め込み式」を採用するのが一般的です。
ちなみに一般的に人がまたぎやすいとされる段差は30~40cmとされています。
そのためバリアフリーリフォームをする際は、この高さを基準にするとよいでしょう。
他にも浴槽に出来る工夫としては底面に凹凸をつけて滑り止めにしたり、底面に傾斜をつけて溺れにくい設計にしたりするなどといったものがあります。
浴槽のバリアフリーリフォームについては約10万円~50万円が相場とされています。
3-5. 脱衣所との温度差を軽減
続いてヒートショックを予防するバリアフリーリフォームです。
脱衣所との温度差を軽減し、いつでも温かいお風呂を作る方法は2つ。
保温性の高いユニットバスに丸ごと変えてしまうか、お風呂の中に浴室暖房乾燥機を付けるという2種類の方法があります。
近年開発されているユニットバスはどれも保温性が高く、冷たい外気が入りににくい設計になっています。
また、丸ごとのリフォームではなく浴室暖房乾燥機をつけるだけでも効果的。
ちなみにこの浴室暖房乾燥機をつけるバリアフリーリフォームには約20~50万円がかかるとされています。
3-6. 手すりを付ける
お風呂の随所に手すりを付けるのもバリアフリーリフォームの1つです。
これによりちょっとバランスを崩したときにもつかまる場所が出来るので、大きな事故につながりにくいというメリットがあります。
また手すりがあることで、立ちしゃがみをする時にも力が入りやすくなります。
ちなみに手すりを付ける工事は1つあたり約5千~1万円で出来るとされています。
3-7. 間取りを拡張する
お風呂の空間そのものを拡張するというバリアフリーリフォームもあります。
このリフォームは介護者が一緒にお風呂に入る必要がある場合や、車いすの方の入浴に有効です。
脱衣所との壁を一度取り払い、お風呂の空間を再構成します。この工事においては、家の間取りによって費用が変わります。
お風呂を広くすることで介護する方もされる方も快適に入浴することが出来ます。
3-8. 非常ブザーなどを設置する
もし浴室内で何かあったとき、すぐに助けを呼べない可能性があります。
そんなときのためにボタン1つで介護者に非常事態が伝わる非常ブザーや発信機を取り付けることをおすすめします。
浴室に設置するタイプ以外にも、置くだけのものもあるので自宅に合った商品を選びましょう。
ちなみにこうしたアイテムは約2万円~5万円で購入することが出来ます。
バリアフリーリフォームのポイント
最後にバリアフリーリフォームをする上でのポイントをご紹介します。
4-1. バリアフリーリフォームの得意な業者に依頼
依頼する業者の選定は慎重に行う必要があります。
リフォーム業者の中でも、バリアフリーリフォームに特化している業者もいれば、バリアフリーリフォームの経験が少ない業者もいます。
業者のホームページや口コミなどで、バリアフリーリフォームの実績がある業者に依頼するのが間違いないでしょう。
4-2. ケアマネージャーなどに相談する
家族が要介護や要支援などといった認定を受けている場合、バリアフリーリフォームを検討している旨をケアマネージャーに相談してみましょう。
ケアマネージャーはその人に必要なバリアフリーリフォームの種類や、必要な費用などの相談に乗ってくれます。
無駄のないリフォームをするためにもケアマネージャーに相談しながらリフォームを進めていくのがおすすめです。
4-3. 補助金制度を利用する
家族が要介護や要支援の認定を受けている場合、介護保険を利用して補助金を受け取ることが出来ます。
バリアフリーリフォームは比較的お金のかかるリフォームなのでこうした制度をうまく利用して費用を浮かせましょう。
支給額はというと、支給限度基準額20万円の9割(18万円)までとされています。
詳しい申請の方法などについては厚生労働省のホームページをご参照下さい。
まとめ
お風呂のバリアフリーリフォームについてご紹介しました。
バリアフリーのお風呂は介護者にとっても、より安心で安全なお風呂といえます。
事故や怪我が起きてしまう前に、しっかりとこうしたバリアフリーリフォームで対策を取りましょう。