約20年~30年おきに訪れるお風呂のリフォーム。その際に、介護にも最適なお風呂にリフォームする方が増えています。
皆さんは、介護用にどのようなお風呂にリフォームするのが適しているか、ご存知でしょうか。
実際のところ、「直近で介護は必要ではないけど、ゆくゆくは介護用のお風呂にリフォームしたい…」と思っている方も少なくありません。
しかし、せっかくのリフォーム失敗したくないですよね。実は、介護用にリフォームする際にもいくつか重要なポイントがあります。段差や手すりなど、あらゆる方面で安全を考えてリフォームする必要があるのです。
ここからは、そんな介護用のお風呂リフォームについてご紹介していきます。この記事を読めば、どのようにすれば安全でお得な介護用のお風呂を導入できるかが理解できることでしょう。
バリアフリーとは
介護用のお風呂を導入するリフォームのことを、「バリアフリーリフォーム」と呼びます。まずはこの「バリアフリー」という言葉が一体どのようなものなのかご説明します。
1-1. バリアフリーの定義
バリアフリーとは、言葉通りバリア(壁)を無くすことを意味します。つまりお年寄りや障害のある方にとって、障壁のない環境を作ることがバリアフリーなのです。
例えば、お年寄りにとって長い階段を上るのは大変です。そこでエレベーターをつけたり、階段をスロープにするなどして現状の生活をより快適にすることをバリアフリーと呼びます。
1-2. ユニバーサルデザインとの違い
バリアフリーに対して、ユニバーサルデザインという言葉があります。これらはよく同じ意味にとらえられがちですが、実は意味が異なるのです。
バリアフリーは、現状の生活における障壁を取り除くこととご説明しました。つまり、リフォームで介護用のお風呂を導入する場合はバリアフリー。
一方ユニバーサルデザインは、最初の設計段階から誰もが生活しやすい環境を作ることを意味します。新築の家にはじめから介護用のお風呂を導入するのはユニバーサルデザインの考え方なのです。
介護に適したお風呂とは
それでは早速、介護に適したお風呂を導入するにはどのようなポイントに気を付ければよいのか、見ていきましょう。
2-1. 入り口の段差がない
まずお年寄りや足腰の弱い方にとって、最初の難関となるのがお風呂の入り口です。
設計上、お風呂に入るときに段差があるケースがよくあります。入った瞬間一段下がるこのような設計は、すべって転倒してしまうリスクを上昇させます。
また、お風呂から出るときに段差でつまずいてしまう危険性もあるのです。
お風呂では裸で、かつ水で床が滑りやすくなっています。そのためちょっとした転倒が大けがにもつながりかねないのです。
バリアフリーにするには、こうした段差を埋める工事を行います。
2-2. 随所に手すりが付いている
先述したようにお風呂は非常にすべったり転んだりしやすい空間です。
それに加えてどこにもつかまる場所がないと、余計にその危険性が高くなってしまいます。
そこで、お風呂の壁の随所に手すりを付けます。これにより、万が一の時にもつかまって怪我を防ぐことが出来るのです。
洗い場だけでなく、浴槽の壁側にも手すりをつけます。これにより、浴槽に入るときや出るときにもしっかりと力を入れて動作することが出来るのです。
2-3. 床が滑りにくい
家のお風呂の床がタイル張りの場合は要注意です。
一世代前のお風呂は、床も壁もタイル張りが主流でした。しかし近年においてタイル張りはどんどん少なくなっています。
その理由は水はけが悪く、滑りやすいからです。床が常に濡れている状態にあると、どうしても転倒のリスクが高まります。
つるつるのタイルではなく、速乾性の高いマットな素材に変えることで、より安全になります。近年ではあらゆるメーカーがこうした床の素材を開発しています。
2-4. 2人で入れるスペースがある
介護レベルによっては、付き添いの人が一緒にお風呂に入らなくてはいけない場合もあります。そんな場合、お風呂が狭いと2人共身動きを取りにくくなります。
狭い浴室では身体を洗ってあげたり、身体を支えてあげたりするのも大変です。万が一の時に素早く手助けしてあげられないかもしれません。
介助者の方も快適かつ安全に過ごせるよう、お風呂の広さは非常に重要です。一般的に介護を行う場合には1.5坪程度の広さがあると良いとされています。
2-5. 浴槽のフチが低く太い
介護用のお風呂は、浴槽のフチが非常に重要なポイントとなります。
介護の必要な方にとって、お風呂のフチをまたぐのは一苦労。できるだけまたぐ動作がスムーズに出来るお風呂が理想的です。
例えばフチがあまり高くないものなど。さらにフチの幅が広いことによって、しっかりと体重をかけてつかまることができます。
また、またいでからの浴槽の深さもポイントです。またいだ後の足が余裕をもって底に付かない程の深さだと、少々体に負担がかかってしまいます。お風呂を全体的に浅くするのも手でしょう。
2-6. 浴槽がおぼれない程度の深さ
浴槽でおぼれてしまうというケースも高齢者にありがちな事故です。特に飲酒後や、お風呂で寝てしまうとこうした事故が起こりやすくなります。
体が不自由な方は特に、一度浴槽で体勢を崩すと中々起き上がれません。この時浴槽が深いと、最悪の場合溺死してしまうこともあるのです。
そんな事故を防ぐために、浴槽の深さを浅くするというリフォームも出来ます。もし浴槽内で転んだりしても、溺れない程度の深さの浴槽を導入するのです。
2-7. 脱衣所との寒暖差が少ない
介護の有無にかかわらず、特に高齢者の方が気を付けたいのは「ヒートショック」です。これは冬場によく起こる現象で、寒暖差に体が耐えきれなくなってしまう症状です。
服を脱いで浴室に入ることで全身が急激に冷え、心筋梗塞と同じような症状を起こしてしまいます。
高齢者向けのお風呂のリフォームを考えるなら、寒暖差対策も視野に入れておくと無難でしょう。
寒暖差のないお風呂は湯冷めもしにくく、風邪予防などにも一役買ってくれます。
介護用ユニットバスの特徴
お風呂を全て一新するリフォームの場合、介護用ユニットバスという商品を導入するのもおすすめです。
ここからは介護用ユニットバスがどのようなものなのかご紹介していきます。
3-1. 浴槽
介護用ユニットバスで採用されている浴槽は、身体の不自由な方や高齢者でも出入りがしやすい設計になっています。
お風呂のフチの高さは床から約40㎝前後。一般的なお風呂よりも20㎝低く設計されています。
このタイプのお風呂は浴槽の3分の1が床に埋め込まれているため、浴槽自体の広さは一般的なものと変わりません。
フチはつかまりやすいように幅広く設計されており、浴槽の底部には傾斜があります。
浴槽に浅い部分と深い部分を作ることで、入り方次第で全身をしっかり湯船に沈めることが出来ます。
3-2. 床
介護用ユニットバスの床にはクッション性の高い素材が使われています。これは転倒時の衝撃を吸収し、大きな怪我を防ぐためです。
また、速乾性の高い素材も利用されます。これにより床がすぐに乾き、水で滑るリスクも軽減してくれます。
水で濡れていなければ、床のひんやり感も大幅に軽減されるでしょう。ヒートショック対策としても有効です。
ちなみに水が長く滞留しない床は、水垢やカビが付きにくいというメリットもあります。
3-3. 入口と扉
バリアフリーのお風呂にするには、脱衣所とお風呂の段差を2㎝以下にする必要があります。
家の構造次第で工事内容が変わりますが、こうした段差をなくすことによってつまずきのリスクは大きく軽減されます。
またお風呂に入る扉は引き戸か折れ戸がおすすめです。引き戸のメリットは、開閉に力がいらないこと。
さらに入り口にしっかりとスペースを確保できるので、車いすなどの方でもお風呂に入りやすいのです。
一方折れ戸は、お風呂の中で万が一何かあったときに外からいつでも開けることが出来ます。
3-4. 浴室暖房乾燥機
ヒートショック対策として有効なのがこのアイテムです。浴室暖房乾燥機をつけ、冬場はお風呂に入る直前に稼働させます。
これによりお風呂に入るときも寒く感じにくくなり、ヒートショックを起こしにくくなるのです。
また脱衣所にも小さなストーブなどを置くと、より効果的です。
何より寒暖差をなくすことが重要なので、出来ればお風呂の内部も脱衣所もどちらも温められるとよいでしょう。
3-5. その他アイテム
その他、必要に応じて使えるアイテムがいくつかあります。
まず介護度の高い方におすすめなのが、シャワーキャリーという介護器具です。
これは浴槽内で使える車いすのようなもの。十分な広さがあれば、座ったまま浴槽内で洗ったりすることが出来るので便利です。
次にバスリフト。これは浴槽への出入りを電動でアシストしてくれる介護器具です。
これがあれば自分でまたいで浴槽に入ることも無く、転倒リスクも減ります。介護者が体を支えてあげる必要もなく、お互いに負担の減るアイテムです。
そして最後に浴室発信機です。これは浴室インターホンとはまた別物で、駅のトイレにある非常ボタンに近いアイテムです。
何かあったときにお風呂の中でボタンが押されると、それがリビングやキッチンに警報として届きます。
怪我があった時などにすぐ駆け付けられるアイテムです。
介護に向けたリフォームのコストを抑えるには
介護に必要なリフォームとはいえ、お金がかかりすぎるのは考え物です。中々そこまでリフォームにお金をかけられないという方もいるでしょう。
ここからはそんな介護用リフォームのコストを抑える裏ワザをご紹介します。
4-1. 介護保険を利用する
国の事業の一環で、「高齢者住宅改修費用助成制度」というものがあります。これは高齢者向けのバリアフリー仕様にリフォームした際に補助金が出る制度です。
例えば入り口の段差をなくす工事だけでも、バリアフリー化といえます。この制度に適応される工事で、かつ家庭に要介護認定の方がいれば、最大20万円までは1割負担で工事が出来るのです。
工事前・後で必要書類の提出や申請が必要なので、是非国や市町村にお問い合わせください。
4-2. 特定福祉用具を導入する
特定福祉用具に認定される介護器具は、介護保険を使うことで最大10万円までは実質1割負担で購入することが出来ます。
たとえばお風呂に置く椅子や手すり、床に敷くすのこなどは特定福祉用具に認定されています。
こうしたちょっとしたアイテムのコストも介護保険を利用することで抑えられるのです。
4-3. 市町村の補助制度を利用する
お住いの市町村でも、こうしたバリアフリー工事に対して補助金を出している可能性があります。
市町村の窓口に問い合わせて、補助金制度があれば是非有効にお使いください。
まとめ
介護用のお風呂のリフォームについてご紹介しました。
介護を念頭に置くと、お風呂のリフォームにあたり気を付けるべきポイントが多くあります。
複数回にわたって利用できない補助金制度もあるので、リフォームする際は抜けのないようにしっかりと検討しましょう。